林檎泥棒

林檎泥棒になりたかった

菜々家のお弁当

数日前に初めて菜々家のお弁当を食べた。

 

私にとって自炊はセルフケアの意味合いが強く、

かなり生活に余裕があるときしかできないので

この半年以上ずっと買ったものを食べたり外食したりしている。

 

併せて外に出るエネルギーを失っているので、

金銭的に余裕もないがデリバリーにかなりお世話になっている。

 

近くのスーパーの総菜にも飽き、コンビニの味にも飽き、

家に届く範囲のデリバリーの食事にも飽きて楽しみの無い食生活を送る日々の中、

数日前にふと菜々家のお弁当を頼んでみた。

 

銀ひらすの西京弁当と男爵コロッケ、豚汁。

いつものように届いたものをときめきも感じないまま食べようとした私は、

袋から取り出して蓋を開けたら現れたお弁当にはっとしたかすかな驚きを感じた。

そこにはしばらく出会っていなかった素朴さと親切さ、あたたかさがあり、

私はとても自然に手をあわせて「いただきます」をしていた。

こんな毎日を許されているような、優しくておいしい食事だった。